眼球偏位への対応 その1

前項までの説明で、重症心身障害児(重心児)の眼球偏位の存在と、それによるアイコンタクトによりコミュニケーションの不具合が生じることを理解していただきましたか?

ではどうすれば、このような重心児とのコミュニケーションを高めることができるでしょうか。

1.対象児の状態を正確に把握する。基礎疾患の診断と治療状況を関係者が理解できるように、情報を共有する。たとえば脳波の異常があり、それに対して投薬中でほほコントロールできている(小児科・小児神経科)・下肢に脳性まひがあり装具の装用とPTによる訓練中(整形外科)・ABRでは少し聴覚障害の可能性があるが人の大きな声は聞こえているはずである(耳鼻咽喉科)・眼球内には明らかな異常はなく屈折異常も認めない(眼科)などの情報が必要です。

重心児でなくとも普通の小児や軽い障害を持つ児についても、いろいろな科でスクリーニングをおこなう必要があります。

異常がなさそうでも、なんらかの療育を受ける児は、眼科や耳鼻咽喉科のチェックを受けてから、療育を開始する体制にするべきでしょう。

2.眼科で中枢性視覚障害があるとか眼球偏位があるとの診断を受けている児についての対応です。

まず親にだっこされた状態からです。本人がその場に慣れないで泣いている時は、泣き止むまで待つのがベストです。検査する人(検者)が50cmぐらい前方から観察して視線が合うかどうかをみます。合う時があるが、合わない時もあるなら眼球偏位1から2です。視線が合う時がないなら眼球偏位3と考えてください。懐中電灯の頭を外した点光源やおもちゃを見せて追視をみてもいいですが、言葉かけや音の出るおもちゃは避けてください。

次にベッドなどの平らな所に寝かせて臥位にしてください。やはり泣いていたりしている場合は落ち着くまで待ちます。同様に観察して視線が合うか・追視があるかどうかみます。だっこや座位での結果を比較してください。ほとんどの症例で、改善するでしょう。

ただ緊張性迷路反射のある児では,仰臥位では緊張が強くなり眼球偏位が増えます。伏臥位にして頭を保持してあげると緊張が和らぎ眼球偏位は減少します。

3.眼科の受診が未だの方

現在通園通所中なら、そこから重心眼科相談を依頼してください。急がれる場合は当院へ直接お越しください。予約は要りません。

重心眼科相談を受けられた場合は、近くの眼科への紹介をします。