アイコンタクトによるコミュニケーションの不具合の頻度

眼科医である筆者は、肢体不自由の特別支援学校の生徒の中枢性の視覚障害を持つ患者の頻度を前の項で説明しました。それでは担任の先生はどのように生徒を評価しているのでしょうか。うまくコミュニケーションがとれて教育現場で問題はないのでしょうか?

2014年11月に同校の担任を持つ教師に4段階のアンケート用紙を送付し、12月末で集計しました。調査時点での全員の208名です。対象の人数が異なるのは、転入出が多いことと、検診では訪問の14名と検診欠席者が含まれていないことによります。

0: 目と目でコミュニケーションが常にできると考える子供さんは何人ですか。
1: 時々反応がわからないが、半分以上は目と目でコミュニケーションがとれる子供さんは何人ですか。
2: ほとんどコミュニケーションが取れないが、時に視線が合ってコミュニケーションが取れると思われる子供さんは何人ですか。
3:目と目でコミュニケーションをとれることはないと考えている子供さんは何人ですか 。

この円グラフと、この1つ前のトピックスの眼球偏位(中枢性視覚障害)の頻度の円グラフを比較してみてください。きわめてよく一致しています。

つまりアイコンタクトによるコミュニケーションの邪魔をしているのは、生徒におきた眼球偏位によって、生徒が反応していないことによるものであります。

教育のみならず療育・診療・家庭生活・集団生活をおこなっていく上で、アイコンタクトによるコミュニケーションの不具合は、大きな問題です。まして眼球には視覚障害を起こすような異常が無いとわかっている対象について、アイコンタクトによるコミュニケーションの不具合が起きるはずがないと考えていると、なおさら混乱するでしょう。

ここでは、眼球偏位によって視覚障害が起こることを理解して、眼球偏位が起きている間は、対象とのアイコンタクトによるコミュニケーションはうまくいかないことを正確に理解してください。